印刷価格はどのように決まるか

印刷価格は、一般的な製造業のそれとは異なり、印刷業の原価管理や会計は基本的にドンブリ勘定であることが特徴で、利益は単純に総収入から総支出を引いたものになっています。自社で製品を開発・製造して販売する製造業なら、各工程別・材料別の原価や経費が明確に把握され、売り渡し価格に反映させることができますが、印刷業の場合、まずクライアントの発注を受け、すべて異なる印刷物を異なる生産工程・生産時間で作りこむために、個別の原価を把握することが難しいためです。したがって結果的に、ある一定の期間に作ったものの総原価を集計し、経費を引き当てるような原価計算の仕組みにならざるを得ないのです。『印刷料金は分かりにくい』と言われるのは、このように工程が複雑で、品質・材質・納期などの注文により様々な『順列組み合わせ』があることが原因です。


しかも同じ仕様の見積もりも、会社によって大きく料金が異なるのも分かりにくさに拍車をかけています。これは原価の仕組みが問題になっているからで、1つは営業マンも実は自社の原価をつかんでいないため、目見当で料金を提示していることと、会社の規模・内容によって経費や利益幅の条件がまちまちなので提示金額にばらつきが生じてしまうのです。つまり、大手ほど安いというようなこともなく、同じ品質の物でも大手と中小企業ではその価格に様々な違いが生じてきます。それでは、なぜ印刷の営業マンは容易に値下げをすることができるのか、ですが、その理由は、受注あっての商売であり、勝手にカタログを印刷してクライアントに売りにいくような形態ではないからです。また、会社の大小・規模に関係なく、製造業にしては原価が不明確なので『まずは受注第一』の考えがあり、したがって受注するためには値引きも頑張って応じることになるのです。しかし、実のところは原価を正確に把握していないために、利益が出ているのかどうかも分からない、というのが実情です。受注産業という宿命である以上、受注しなければビジネスが成り立たないため、『まずは仕事を取ってくる』という営業的体質が長い間業界の不文律としてありました。


まして現在のような不景気時代においては、受注減は会社の経営難にもつながってしまうような大問題であることから、『高い』と言われれば少しでも安くして受注しなければ生き残れない、という構造に大きな問題が潜んでいるのです。こういった点においても、受注産業としての位置付けからの脱却と、情報化社会における新たな顧客ニーズへの対応こそが今後求められてきます。